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旅のお供は7人のご先祖様

こんにちは。

昨日はあのままチャレンジが終了しそうな様子でしたが、まだまだやりますよ。

読書感想です……が、タイトルを失敗しましたね。これ、7日目にやればよかった。今日はチャレンジ8日目です。よろしくお願いします。

『セブンス』 三嶋与夢 さん

いやぁ、すごい作品です。これも書籍化作品ですね。三嶋さんの作品は他にも『脇役勇者』や『ドラグーン』も書籍出版されています。

ウォルト家の嫡子ライエルは幼少時「ウォルト家の麒麟児」と呼ばれたほどの天才だったが、いつからか周囲の関心はすべてにおいて完璧な妹・セレスに向けられるようになり、ライエルは見向きもされなくなった。あるとき、ついにライエルはセレスに完膚なきまでに負け、廃嫡されて家を追い出される。そんな彼が、家を出るときに手に入れた【青い宝玉】――それはウォルト家の歴代ご先祖様の記憶とスキルが保管されたものだった! 旅に出るときに一緒に来てくれた元婚約者のノウェム、旅先で出会う人々、そして宝玉内の七人の個性あふれるご先祖様。そんな彼らと共に戦い、ライエルは「成長」していく。

……という感じの冒険譚。最初の方は主人公のライエルがかなりノウェムに頼り切りでダメだと思う方もいらっしゃるかと思います。実際にご先祖様たちも、ライエルのあまりの主体性のなさに苛々すると発言していますし。でも、わたしはあれ、しかたない部分もあるよなぁとは思っていて。生家において絶対的だったセレスの影響を受けなくなるっていうのは、一種異常なプレッシャーから放たれた状態で、ちょっとくらい気が抜けて腑抜けても当然の状態です。それにご先祖様たちが口煩く、ノウェムちゃんはいい子だ、手を煩わせるんじゃないみたいな助言をしていたので、あまり気になりませんでした。あの時期のライエルにはあのぐらい騒がしくて強引なご先祖が7人いるくらいでちょうどよかったのかもしれません。

でも、ライエルが情けないのはずっとですかね。終盤も、開き直って強くなったからごまかされますけれども、ライエルは本当はまだ柔らかい心を持った青年なんですよね。彼がご先祖様たちと交流し、彼らのスキルを継承することで、呆れる部分も多くあれど――尊敬でもって彼らの生き様をも継承し、己の糧とし、「ライエル」になっていく。自己形成、すごい力技なアイデンティティの確立というか。ライエルがもともと持っていた根っこはやさしさなんじゃないかと思います。だからえげつない策を練ろうが甘っちょろくて、ずっと情けない。それでいいんです。彼には、彼のそういうところが好きで、支えてくれる女性がいっぱいいますから。たくさんいすぎて最終話後のライエルには胃薬が必要そうですけど。

個人的には、ご先祖様たちの出番がすごく好きです。だからこそ、スキル継承の後の寂しさと言ったら……! 散々引っ掻き回しておいて、こっちの心にこんなに住み着いておいて、置いていくのかよって叫んで引き留められるなら引き留めたい気持ち(※私見)と、いつまでも子どもではいられないから、だから必要な別れなんだ、困らせちゃいけない、安心させてあげないとって気持ち(※私見)のせめぎ合いが、もうダメです。こういうのダメなんです。好みです。7人もいるから色んなパターンが見られるのもグッドです。たぶん一番ライエルの成長を感じられるシーンです。

あと、「怪物」に勝つライエルは人でなければならない、人であるからこそ、彼の傍には仲間がいるっていうのがツボです。本質的に「怪物」の傍には誰もいない、異質というのは孤独な存在なんですね。

最後に、忘れちゃいけない「成長」システム……! これがあったからこそ、この長編がダレなかったと言っても過言ではないと思っております。ただのギャグ要素かと思いきや、後半では「よっ、待ってました!」と掛け声をかけたくなるほどのお決まり展開に。もう本当に「らいえるサン」の存在は素晴らしい。ラストで、ここでこれを持ってくるのか……! と胸が熱くならずにはいられない。誰だよギャグ要素とか言ったの! このすっとこどっこい! わたしだよ! でもやっぱりギャグでもあると思う!

……閑話休題。とにかく「君の物語を始めよう」まで読んでみて欲しいのです。ここで主人公の目標、つまり物語の軸が、しっかり定まります。サブタイトルの通り、ここからライエルの物語がようやく始まるのです。これは全18章中6章と、全体の3分の1(といっても後の章にいくにつれ1章ごとが長くなるので、実際にはもう少し前)なので、軸を描くにはかなり遅いのですが、それもこのセブンスならではの構成です。ライエルが自分の意見を持ち、言えるように成長するまで、――そして戦う覚悟ができるようになるまで、それだけ時間をかけているのです。この時間があるからこそ、逃げてきたものと、「怪物」と、戦うと決めたライエルの覚悟が軽くならない。セブンスはこの中後半からが本番だと思っています。

もし最初の方で断念しそうになるなら、いっそ数話飛ばしてみてもいいかもしれません。それでおもしろければ、戻って読めばいいんです。もちろん、そういうのが嫌な方もいらっしゃるでしょうけど、わたしは、作者さまや他の読者に迷惑をかけない限り、各々が好きなように、そのひとが楽しめるように読めばいいと思っています。読書は自由なものですから。

うーん、やっぱり長くなってしまいました。

本当はまだまだ語り足りないのですが、これ以上はさすがに……。

ともあれ、今日はこれにて失礼します。それではまた明日。

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2/24 誤字修正

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