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物語のバックグラウンドを知ろう!

こんにちは。

昨日は漫画『3月のライオン』について熱く語りました。しかしながらそれだけでは足りないのです。なぜなら――ご存知の方もいらっしゃるでしょうが――現実でも将棋は”今”熱いからです。これはぜびとも、漫画の背景にある将棋について皆さまに知っていただかなくては! 将棋の簡単なルール……はご自分で調べていただくにしても、主人公の職業であるプロ棋士についてざっと、出来る範囲でお話したいと思います。まぁ、3月のライオンを読めば大枠は分かってくるんですけれどもね。すごいなぁ漫画。

プロ棋士とは

奨励会と呼ばれるプロを目指す人々の集団を勝ち抜いた四段以上の人々のことです。奨励会は三段から6級まであり、入るのにも試験があります。その最終関門である三段リーグは鬼の棲処と恐れられるほど厳しい場所。四段になれるのは一年で4人しかいません。しかも奨励会には年齢制限があり、26歳までに三段リーグを抜け、プロになれねば一生なれないのです。

そうして将棋連盟に所属するプロになった棋士たちは、対局で対局料を得ます。つまり、勝てば勝つほど高い金額を得ることができるわけです。また、棋士は仕事として対局の解説、将棋普及イベントなども行います。

三段リーグを抜け、四段になったばかりの棋士はまずC級2組に所属します。この級というのは棋戦の中でも一年をかけて行う順位戦の位付けになります。C2の人はC2の人と対局を行い、勝率が高ければ来期C1に上がれるわけです。これもまた当然、狭き門ですが。C級の上にはB級があり、こちらも1組・2組とふたグループありますが、A級には組がありません。つまりA級は全棋士のカーストトップです。ここに所属する棋士はタイトル保持者だったり、タイトル戦の挑戦者だったりと、当然の如く猛者ばかり。しかしA級順位戦が名人戦の予選となりますので、名人になるにはA級まで上がらねばなりません。つまり、どんなに強い棋士でもプロ入り後5年経たないと名人位は獲れないということになります。

また、B2以下のクラスでは降級点というのがありまして、これが高い棋士の順に3人~5人程度、下の級に落ちていきます。しかし順位戦で段位が上がるときは級と連動しますが、一度上がった段位は降級しても下がりません。タイトル保持などの規定を満たした最高段位が九段なわけですが、八段や九段でも現在はB2なんてこともあるのです。

タイトル戦と称号

名人戦の予選はA級順位戦であり、所属クラスによって名人位への挑戦が可能か決まるという話をしましたが、他の棋戦はたいていクラスに関係なく(前期の成績により有利不利はありますが)タイトル戦の予選に挑戦できます。中でも竜王は大変格式あるタイトルで、名人位と合わせて特別なタイトルです。そのため、複数タイトルを保持している棋士でも「○○名人」や「○○竜王」と呼ばれます。これら以外は格の差があまりないので、「○○二冠」のように呼ばれるのが通例です。昨日感想を書いた『3月のライオン』では宗谷冬司が7大タイトル中、名人位を含めた5つを持っていますが、この宗谷名人、作品開始より前の時間軸で七冠独占していたことがある設定なんですね。現実では羽生竜王が達成なさった偉業です。羽生竜王は現在「竜王」と「棋聖」の2つのタイトルを持ち(片方が竜王位であるため羽生二冠ではなく羽生竜王です)、かつ7大タイトルすべての永世資格を持っているという漫画顔負けのハイスペック棋士であります。

ここでいう「永世」とは、同一タイトルを通算あるいは連続で一定以上取得した場合に与えられる称号です。通算か連続か、何度取得か、そういった細かいところの規定はタイトルによって異なります。一生のうちにタイトル戦に出られる棋士は非常に少なく、かつタイトルが獲れる棋士は本当に一握り。何度も獲るとなれば、さらに狭き門であることは言うに及ばず。本当にほんとうに、限られた方々が得ておられる称号です。

対局の時間や服装など

タイトル戦になると2日制のものもあったりしますが、対局はたいてい1日かけて行われます。両対局者はそれぞれ「持ち時間」と呼ばれる時間を与えられ、その時間内でその一局における次の手、あるいはそれに連なる数十手先までのあらゆる可能性を考えます。持ち時間が切れると一分将棋と呼ばれる状態になり、対局者は一分以内に指さねばなりません。この持ち時間は棋戦によって様々で、順位戦は予選にしては非常に長く6時間、先日、藤井新六段が優勝した朝日杯オープン戦は持ち時間40分の早指し形式でした。対局後は両対局者で感想戦を行います。

通常の順位戦などは1回の対局で勝ち負けが決まりますが、タイトル戦では番勝負と呼ばれる形式が取られます。五番勝負、七番勝負、つまりは奇数回の対局を行い、五番勝負なら先に3局、七番勝負なら先に4局勝った方が勝ちということになります。……スポーツをしたことのある人なら馴染みがあるかもしれませんね。極論を言えば、七番勝負といっても場合によっては4局しか指さないことがあるということです。

先に持ち時間の話をしましたから、千日手の話もしようと思います。同一局面が4回続いた場合、千日手の成立です。千日手になると先手後手入れ替えで指し直しを行うという規定があります。30分の休憩のあと即日指し直しです。6時間も10時間も頭使った後にもう一回って、いやそれ、体力も集中力も限界超えますよ……。頭脳派なのにアスリートみたいですよね。対局にはおやつの持ちこみも可能で、棋士の方は対局中に盤面を睨みながらお菓子を食べるなんてこともよくあるみたいです。うーん、体力勝負……。

あとは持将棋。これは両者ともに玉が敵陣に入り、互いに相手の玉を詰ます見込みがない場合、双方の同意のもと成立します。成立するには大駒を1枚5点、小駒を1枚1点として数え、各々24点以上なければならず、一方の対局者の点が足りなかった場合は足りなかった方の負けになります。持将棋が成立すると、その対局は無効となります。つまり、これも指し直しです。凄まじい。

服装ですが、順位戦とか予選ではスーツが普通のようです。そして、タイトル戦の盤勝負は和装で行うのが慣例です。いいですよねぇ、和装。無論スーツが悪いとは言いませんが、やはり違った良さがあると思います。「特別な日には特別な服を!」……これは『カードキャプターさくら』でしたっけ。

少しだけでも将棋の魅力は伝わりましたでしょうか? 興味を持っていただければ幸いです。

ただ、わたしも『3月のライオン』から入った新参者ですので、間違っている点があるやもしれません。もしお気づきになりましたらご指摘ください。

それではまた明日――また本かゲームかそこらの感想です。

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