変われ、自分。
――そしたら世界も変わるから。
こんにちは。昨日は微熱や痛みと戦いながらフィギュアスケート女子シングルショート観てました。やはり薬と芸術は偉大。選手の皆々様、素晴らしい演技でした。オリンピックの魔物はまだ大きく暴れてはいない模様……このまま大人しくしていてほしいものです。男子ショートでは大暴れでしたから。
しかし、やっぱり女子の衣装は華やかできれいですね! たとえばライチョバー選手の真紅の衣装! 口紅の色も合っていて素敵でした。長洲未来選手の衣装も色は似ていますが、銀(白?)の模様でより華やかな印象。デールマン選手のカルメンは色気と茶目っ気が感じられる衣装でした。坂本選手の青も素敵ですし、チェン選手の白い衣装は手袋部分が独創的! 鳥をイメージしているんでしょう。ポイントになっている青と緑がとても美しいし、振り付けを前提に作られたのが分かる衣装です。チェ・ダビン選手の衣装は幻想的で妖精のようでしたし、コストナー選手はさすがの美しいスケート。スカートの縫い付ける位置がちょっと上のほうにあるのが特徴的な衣装でしたね。宮原選手のSAYURI、相変わらず素晴らしい。ミス・パーフェクトが本格的に怪我から帰ってきました。そして宮原選手が戦う女性なら、オズモンド選手のパリの散歩道はカッコいい大人の女性……プログラムはもちろん、衣装の色味とスカーフがとっても素敵。
ところで最近の女子のスカートにはスリット入れるのが流行りなんでしょうか? スリットがあれば少々スカートが長くても動きが阻害されないですから。でも短いスカートにも入ってるんですよね……あれはいったい……デザイン?
しかしながらフリーはリアタイ観戦できない予定で……おとなしく録画します。
では今日の話題。
自分が変われば世界も変わる、そんなお話です。
『異世界で魔王になる方法』 ワシワシ さん
タイトル詐欺……とまでは言いませんが、損をしている気もします。タイトルから受ける軽薄さはありません。内容はライトな感じではなく、非常に重い内容ですので。成り上がってウェーイな感じではなく、絵を描くことが趣味の気の弱い少女が、少しずつ、少しずつ前に進む勇気を得ていく物語。ただ、このタイトルには「自分でない何者かになる方法」という意味があるのかもしれません。魔王である必要があったのは、魔王が強者であるからでしょうか。言い換えると「強い自分になる方法」といったところになるのかも。
物語は、シリアス、シリアス、シリアスときて、丁寧に主人公・七子の変化と希望が示されていく様子が胸を打ちます。それと、ちょっとネタバレなのですが、作中における「いせかいでまおうになるほうほう」は共著です。もうひとりの著者の日常からの転落には震えてしまいましたが、この経験で彼女は今までとは異なる視点を得ることができたのだと思います。七子に希望が見えたのだから、共著者である彼女にもきっと見えたはず。どうか彼女も穏やかに生きられますように。
――自己破壊衝動・タナトス。この物語における重要なファクターです。
もう嫌だ、消えてしまいたい。きえたくない、いきていたい。矛盾する思いは、同時に人のこころに存在し得る。もうどうしようもないから、疲れ切ってしまったから、消えてしまいたい。でも、本当は――、そう思うのは普通のことだとわたしは思います。憂いを払うだけの力がない、疲弊しきって適切な判断ができず、逃げるなんて思いもつかない。あのときは異常だったと思えるようになるのは、こころの健康を取り戻してからのことですから。
途中、哲学的で複雑なところがあり、わたしもすべて理解したとは言い難いのですが、なにもすべてを理解できなければ読んではいけないということはありません。けれど、作者さまはおそらく、きちんと筋道を立てて書いてらっしゃるので、それを理解できない口惜しさはあるのですが……まぁそれは偏にわたしの力量不足、努力不足なのでしかたありません。
作中には、いじめ問題、それも非常に重い、もはや犯罪である深刻な事件が描写されています。色々な立場の方に読んでほしい半面、精神状態が不安定な方は読むのが辛いだろうとも思うので、なかなか一口に「おすすめだよ!」と言えない部分もあります。ただ、ひとつ言えるのは、この作品を読み始めたなら、最後まで読んでいただきたいということなのです。この物語は最後まで読まなければ、ただ辛い描写が多いだけの小説になってしまいます。最後まで読むことではじめて、この物語は形になるのです。
七子は、前を向くことができる女の子になりました。 ほんの些細なことで日常は変えることができる。自分が思っていたより世界はずっとずっと広かったのだと、自分がいた場所がどんなにか狭く閉ざされていたかに気がつけたなら、もう変化は起きている。目線を上げる、たったそれだけでまったく別のものが見えてくるかもしれない。それだけ世界はやさしく、あたたかさに溢れている。それだけじゃないと知っているけど、冷たいばかりでもないと、信じられる。信じられるように、変わることができる。それはとても幸せなことだと思います。この小説はそれを誠実に描いた、世界が変わる瞬間を目の当たりにできる作品だと感じました。 口惜しいのは、これを読んでもピンとこない、全然おもしろくないと思う方もいらっしゃるだろうということです。個人的には一度は読んでほしい作品なのですが、おそらく無自覚で幸運な方は読んでも意味がないでしょう。刺さるひとには、きっと深く刺さる作品になります。そのことに、今、気がついていなくても。
重くなってしまいましたが、今日はこれにて。 それではまた明日。